Photo: Sega/YouTube

YouTubeでは『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』関連の動画がアルゴリズムによって自動的に「子ども向け(12歳以下の視聴者が対象)」動画に設定されていることが明らかになっている。「子ども向け」に設定された場合は各種機能が制限されるため、通常の動画で使用していたマーケティングやブランディングを手法を変更する必要があり、『ソニック』関連の動画を投稿しているクリエイターの多くがYouTubeからの収益が減少したと主張している。

YouTubeでは、ソニック関連のコンテンツが自動的に「子ども向け」動画に設定されるという事例がここ数週間で多発している。これらのコンテンツは投稿時に13歳以上のみを対象とした「子ども向けではない」動画として投稿されたという。ソニック関連のアニメーション動画を投稿しているチャンネル「バレナ・プロダクションズ」は登録者数が100万人以上にのぼり、今までに投稿された動画の総再生回数は5億1700万回を超えているが、今回の件で同チャンネルが投稿した動画の多くが自動的に「子ども向け」に設定されたという。

「バレナ・プロダクションズ」を運営しているスティーヴン・ペイジは『NME』のインタヴューで「現時点では、今後アニメーションの制作を続けられないと思っています」とコメントしている。彼は動画の多くが「子ども向け」に設定されたことで、安定して収益を上げることが難しくなったと述べており、このままでは他のクリエイターに動画制作の仕事を依頼できなくなる可能性もあるという。

他のソニック関連のコンテンツを扱うYouTubeチャンネルでも同様のケースが発生しており、動画の投稿に際して、子どもに不適切な画像やテーマを含んだ「子ども向けではない」設定にしていても、YouTubeによって多くの動画が「子ども向け」指定にされたという。「子ども向け」になると、動画のコメント機能や通知そしてパーソナライズド広告などの各機能が無効化されるうえ、YouTubeでの視聴者層も大幅に制限されるという。

スティーヴン・ペイジは「『子ども向け』に設定された動画は、他の『子ども向け』コンテンツの山に埋もれることになります。『子ども向け』に設定されているコンテンツは完成度の低いものが多く、自分がどれだけ動画の質を高めようとしても完成度の低い動画と同等のものとして扱われ、視聴者や広告主から正当な評価を得ることができません」 と語っている。「なかには残虐なシーンや暴言が含まれているにもかかわらず、『子ども向け』に設定された動画もあります。逆に大人向けのアニメーションでも『子ども向け』指定になっている動画もあるので、この設定はまったく機能していません」

スティーヴン・ペイジによると、ある晩YouTubeから何カ月もかけて制作した動画が「子ども向け」に設定された旨の通知を受け、この通知に対して抗議したが、結果は覆らなかったという。その後、スティーヴン・ペイジはYouTubeの運営チームから別の通知を受け取り、今回の処置はエラーではないと伝えられた。他の情報筋が『NME』に語ったところによれば、こういった事例は非常によくあることだという。

スティーヴン・ペイジは次のように述べている。「今回、『子ども向け』に設定されなかった動画もありますが、その違いについて詳しい説明は得られませんでした」

YouTubeは2019年に、動画を公開するときには「子ども向け」の内容かどうかを設定するよう投稿者に義務付けている。その理由として米国連邦取引委員会がYouTubeを調査した際に、同プラットフォームが子ども向けコンテンツを通して若年層をターゲットにした広告を出しており、13歳未満のインターネット・ユーザーを保護する「児童オンライン プライバシー保護法」に違反していると指摘されたことが挙げられる。

この調査の結果、同委員会は2019年9月に、YouTubeに対して1億7,000万ドル(約220億円)の罰金に加えて、投稿される動画の内容に応じて「子ども向け」の設定をするよう義務付けている。その後YouTubeは子ども向けのコンテンツを管理する方法として「所在地にかかわらずクリエイターは動画が子ども向けかどうかを申告」する規則を運営ポリシーに追加している。

同じくソニック関連のアニメーション動画を投稿している「ピクセルラッシュ」によると、同社の人気動画も今週に入って「子ども向け」指定になったという。この動画は「シー・ユー・アゲイン」と題されており、ソニック生誕28周年を記念して2019年にアップロードされたもので、現在のところ再生回数は5200万回を超えている。

現在、動画「シー・ユー・アゲイン」ではコメント機能が使用できず、視聴者と直接やりとりができない状態になっており、以前のようにスポンサーもつかないという。同社もスティーヴン・ペイジと同様にYouTubeに対して抗議をしたが、聞き入れられなかったと主張している。

「ピクセルラッシュ」は次のように述べている。「公開するときに『子ども向け』かどうか、投稿者が設定するルールのはずなのに、YouTubeが動画内で目立つ色使いや有名なキャラクターなど子ども向けコンテンツと判断される要素を検知すると、強制的にカテゴリーを変更してしまうのが納得できません。我々クリエイターの判断を無視しています」

YouTubeは独自のアルゴリズムを使って同社の運営ポリシーに該当する動画を自動的に「子ども向け」に設定する一方で、「子ども向け」にもかかわらず有害な画像や内容が含まれている動画も存在するという。

また、YouTubeの運営チームが「子ども向け」と設定されている動画が、実際には子どもの視聴者にとって不適切なコンテンツであると判断した場合、それがアルゴリズムによって自動的に設定されたものだとしても、動画の投稿者に「児童オンライン プライバシー保護法」や「その他の法律に基づいて法的措置が取られること」があるという。「ピクセルラッシュ」はこの規則について次のように述べている。「YouTubeの運営チームは、単なる思いつきのような適当な規則のもとに、私の制作してきたコンテンツやチャンネルをいじることができるのです」

「ピクセルラッシュ」は、この子ども向けコンテンツに関する取り締まりが今後ソニック関連のコミュニティやアニメーションの制作活動にどのような影響を与えるのかという質問に対して、「なんとも言えない」と回答している。

なぜ最近になってYouTubeのアルゴリズムが、ファンによるソニック関連のコンテンツを集中的に取り締まっているのかは明らかになっていない。ある『NME』のインタヴューによると、最近劇場版ソニックの続編が発表されたことと何か関連があるのではないかとする意見がある一方で、関係ないと言う人もいる。

「ピクセルラッシュ」は「今回の件で何か前向きに捉えられることがあるとすれば、それはソニックのファンが築いてきたコミュニティでは、どんな困難があっても自分たちが愛するものを作り続け、大切にすることを止めないだろうということです」 と語っている。「ソニックのファン層もさまざまで、なかには人に迷惑かけるような方もいますが、その愛は非常に強固です」

YouTubeはアニメーション動画を制作しているクリエイターにとっては活動しづらいプラットフォームとなっており、広告を出せる時間が長く、制作期間が短い動画を増やそうとする傾向にある。一方で、アニメーション動画は一般的に一本あたりの再生時間が短く、制作に時間がかかり、YouTubeの求める動画の内容とは大きくずれている。

スティーヴン・ペイジは「YouTubeは動画共有プラットフォームとして非常に有用なツールを持っていますが、運営側がうまく使いこなせていないため、今後も(クリエイターにとって)状況が良くなるとは思えません」 と語っている。「YouTubeが運営の方針を変えれば(そしてアルゴリズムを調整すれば)、アニメーターも生き残っていける可能性がありますが、現段階で方針を変更することはないでしょう」

「『ソニック』は単に子ども向けのキャラクターという印象をお持ちの方も多いと思いますが、31年間続く人気シリーズであり、さまざまな年齢層のファンがいます。対象年齢を絞るよりも31年の歴史の中で築いてきた幅広いファン層を重視すべきだと思います」

その他のニュースとして、任天堂の代表取締役社長である古川俊太郎は2022年3月期 決算説明会の質疑応答で、「これまでのプラットフォームビジネスの課題であった次のハードウェアへのスムーズな移⾏に関して考え⽅を教えてほしい」という質問に対して「将来、新しいハードウェアを発売するときにスムーズな世代交代ができるかという点は、過去のWiiやニンテンドーDSをはじめとするハードウェアの世代交代の経験を振り返っても、当社の課題の⼀つであると認識しています」と発言している。

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