ソニー・インタラクティブ・エンタテインメントの社長兼CEOであるジム・ライアンが従業員に向けて送信した社内メールの中にあった、人工中絶の権利に関するコメントに一部の従業員が反発の声をあげている。
『ブルームバーグ』によると、ジム・ライアンは5月12日付の社内メールでアメリカ国内での人工中絶の権利について触れており、「異なる意見を尊重する」よう従業員たちに呼びかけている。その後、明るい話題を提供しようと「飼いネコ2匹が1歳の誕生日を迎えた」話を数段落にわたって続けている。
女性が人工中絶を選択する権利をめぐっては、アメリカ全体を揺るがすようなニュースが米メディア『ポリティコ』によって報じられている。同メディアによれば、全米の各州で人工中絶が合法化される契機となった1973年の「ロー対ウェイド判決」について、当時の判決を覆すような意見書の草案が今年2月に米最高裁判所内で回覧されていたという。現地時間5月2日付で報じられたこのニュースを発端に、全米で多くの女性たちが抗議の声をあげている。
仮に最高裁で「ロー対ウェイド判決」の判決が覆された場合には、全米各州が妊婦の中絶に関する法律を独自に制定できるようになる。そうなれば、中絶を「違法」とする州が出てくる可能性もある。
『ポリティコ』による報道を受けて、SIE傘下のバンジーならびにマイクロソフトの子会社であるダブル・ファイン・プロダクションは、最高裁の意見書草案に反対する公式声明を発表している。その一方で、SIEのトップであるジム・ライアンは人工中絶の権利に関する自らの立場を表明せずに「(自社およびその従業員たちは)多角的な視点と多様性をもち、さまざまな観点で物事を見ています」と、社内メールに記したという。
彼はさらに「会社と従業員、そしてプレイステーションのユーザーは互いに支え合う関係です。また、(社内外の人々を含めた)異なる意見を持つ人々を尊重していくべきなのです」と述べ、「意見の“尊重”と“同意”は必ずしも同じ意味ではありません。しかし一企業として、そして価値あるグローバル・ブランドとして、SIEの根底には異なる意見を尊重する文化があります」と従業員に向けて発信している。
これに続いて、ジム・ライアンは「いつ何が起こるか分からないこの世界」でも「従業員たちが心の平穏を保てるように、みんなを鼓舞するような明るい話題を提供したい」と、飼いネコの誕生日とお祝いのケーキ、ネコたちの鳴き声、そして「犬を飼ってみたい」という自らの願望を話題として取り上げたという。
この社内メールを受け取った各スタジオの従業員のなかには、トップの発言に怒りを表す者もおり、『ブルームバーグ』では「ネコの誕生日でこれほど怒りを感じたことはない」と語った社員のコメントが紹介されている。
人工中絶の権利に関する意見書の報道については多くのゲーム関連企業が沈黙を保つなか、ダブル・ファイン・プロダクションは5月6日に公式ツイッター・アカウントで「心身の健康において(女性の)誰もが必要とする権利に確固たる支持を表明します」と述べている。
また、バンジーは米最高裁の草案に対して「(1973年の判決を覆すのは)アメリカの自由に対する冒涜であり、人権の侵害です」と公式ブログで抗議している。
その他のニュースとして、イタリアのゲーム販売会社である505ゲームズが初のデジタル・ショーケース「505ゲームズ・ショーケース 2022年春」を5月17日22時からライヴ配信すると発表している。
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